いっそ空を描い

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前7時頃に兄貴のアパートの大家さんから電話かかってきたではないか。

大家さん「お兄さん救急車で運ばれていきました」
一鷹さん「……What?」

とかネタにできる程度にはもう油断しきっているのだけど、とりあえず入院して明日検査を受けるそうな……7月1日といえば富士山吉田ルートが山開きだったり、色々書きたいことあったのだけど救急車のインパクトに全部かっさらわれた……とりあえず私は元気です。
兄貴も、聞いてる限り命に別状はないというか、単に免疫力落ちてたんだろうなぁと。

厚生労働省の人口動態統計月報年計と、気象庁の気象統計情報から判ずるに、日照時間が短いと自殺率が上がるので「とりあえず空は晴れとこうぜ!」と思ってるのだけど、利根川の取水制限を聞いてから考え込んでる。雨の日に青空を仰ぐ方法ってないのかなぁ。読書かな。プラネタリウムかな。てみるとか。
雨を雨のまま楽しむか。
人だけなのかな。他の生き物は、もちろん寒さとかで死んでしまうことはあるだろうけど、気が滅入って死ぬこともあるのかな。どうなんだろう。人間だけがあの黒い曇り空に負けてしまうのだと考えると少し悲しい。
カエルはきっと雨の日は楽しい(楽しいという感情があるのかな……?)だろうし、他にも植物全般には恵みの雨だ。
でもサキはきっと、雨は苦手だろうなぁ。というか水が不得手。猫は砂漠の生き物だし。
この子はそもそも、自力では家から一歩も外に出たことがなくて、雨を知らないのだと考えると不思議。雪が降った日にはとても興味深そうに、暖房の効いたあったかい部屋から、あのちらつく白を見上げていた。

とか思い出しながら、もうすぐそこまで来ているのは、冬じゃなくて夏なんだけど。



る話だと思うの

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 それで、子供に自殺されてしまったのでは、親は堪《たま》ったものではないだろう。早苗は、自殺した青年よりも、むしろ残された両親に同情した。
「醜形コンプレックスが泡菜 食譜原因なのかどうかわからないけど、高校在学中から引きこもりがちになって、結局、中退してるわ。その後は、ずっと家でぶらぶらしてたんだけど、最近は、よく外出するようになったり、少し明るい兆しが出てきたんで、周囲もほっとしていたところだったらしいの」
 鬱病《うつびよう》などでは、治りかけが最も自殺の危険性が高い。話の筋は、それなりに通っていた。だが、早苗は、『明るい兆し』というのに、妙に引っかかるものを感じた。
「それが、昨日の晩、突然自殺したのよ。まあ、そこまでは、気の毒だけど、よくあ。だけど、その自殺の方法が、何とも異様なのよ」
 どきりとした。
「どうやったんですか?」
 自分の声が、掠《かす》れているのを自覚する。
「深夜、工場に忍び込んで、劇薬の溶液に顔を浸けて死んだのよ」
 美智子は、立ち上がって窓際へ泡菜 食譜行き、外を眺めた。
「金属メッキなんかに使う、重クロム酸ナトリウムっていう薬でね。猛烈な酸化作用があるらしいの。もちろん、自殺した彼は、よく知っていたはずよ。工場には、水溶液をポリ容器に入れて保管してあったんだけど、それを大型の金盥《かなだらい》にあけて、顔を浸したということらしいわ。自殺の方法としてはあまりにも異常なことから、警察は一時、他殺の線も疑ったらしいんだけど、現場は一種の密室でね。自殺であることだけは間違いないということだったわ」
「でも……それは、すごい苦痛を伴うんじゃないですか?」
「そのはずよ。死因は、顔の組織を広範囲に損傷したことによる、火傷に類似した外傷性ショックなんだけどね。彼の顔は、皮膚だけでなく、結合組織や筋肉の一部まで、どろどろに溶けていたらしいわ」
「とても、信じられません」
 早苗は、鳥肌が立つような気分に襲われていた。
「奇妙なことは、まだあるのよ。彼は、目だけを保護しようとしていたかのように、競泳用のゴーグルをつけていた形跡があるの。文字どおりの形跡ね……顔に、溶けたゴムの跡が黒く付いていたんだから。すぐにゴムとプラスチックが冒されたために外したら泡菜 食譜しくて、溶けかかったゴーグルは、足下に放り出してあったそうよ」
「何のために、そんなことをしたんでしょう?」
「それだけなら意味がわからないでしょうけど、そばには鏡もあったのよ」
「鏡?」



事も用意してく

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 姉の声は、怒気を帯びた。
「あんた、自分の年、考えたことあるの? いつまでもふらふらしとるけど、もう二十八なんよ?」
「わかっとるわ。自分失眠の年くらい、言われんでも」
 信一は鼻白んだ。
「ちっとも、わかってないやないの。いつまでも、プー太郎でどうすんの? お父さんとお母さんも、いつまでも元気やと思っとったら大間違いやからね」
「俺《おれ》はプーとちゃうで。ライターや。今もパソコンで、原稿書いとったとこ……」
「何が原稿やの。笑わせんといて!」
 ゲームやアニメ雑誌に投稿した文章が何度か採用されたことから、信一は、フリーライターという肩書きの付いた名刺を作っていた。いつかは、本格的なゲームの評Diamond水機論を書こうとも思っていたのだが、当然のことながら、姉は歯牙《しが》がにもかけない。
「ええかげんに、目え覚ましなさい! うちの人が、あんたに仕れてる言うてるんやから。わかってんの? この不景気で、ほんまはリストラせなあかんとこなんよ。それを、特別にあんたのために……」
 怒りで、少し手が震えた。だが、反論する言葉は出てこない。これまでも、いつもそうだった。腹の中では、様々な思いが渦巻いているのだが、それを言葉で表現することができないのだ。
 信一は長く息を吐き出すと、受話器を置いた。しばらくは、すぐにまた姉から電話が来るのではないかと身構えていたが、それっきり呼び出し音が鳴ることはなかった。
 すっかり気分が悪くなっていた。一刻も早く神聖なゲームの世界に入り、すべてを忘れたかった。この世で彼が唯一愛しているのは、ゲームのヒロインである『川村紗織里ちゃん』だけだった。
 CD―ROMをセットし、ヘッドホンをつける。ゲームの起Diamond水機動画面をクリックすると、テーマソングである『School Days』が始まった。もう、それだけで涙が出そうになるほど、ほっとする瞬間だった。




何が起こったの

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 少し硬くてごつごつとした手が、背中を優しく撫でる。大丈夫だからと耳元で囁かれて、心拍数もようやく元通りへと戻っていく。
 やっと、怖がっていることに気づいて助けてくれた。そのことに安堵した健人は、ようやくパニック状態から抜け出すことができて、現状を把握する思考を取り戻した。
 健人は少し顔を上げて、抱きしめている歩の顔を見る。2、3度瞬きをして、目の前に居るのが本当に歩なのかと自分の目を疑った。雨に濡れたのか、髪の毛や服はびしょぬれになっていて、いつもとは違う雰囲気だ。抱きしめられていることに、なぜか嫌悪は抱かなかった。
「……あ、ゆむ……?」
 恐る恐る声をかけると、ゆっくりと体が離れていった。健人の顔を覗き込み、落ち着いているのを見ると「大丈夫?」と今度は確認するように尋ねてきた。
「え、あ……、うん」
 どう返事をして良いのか分からず、健人は頷くだけ頷くと歩は健人の頭を撫でて「良かった」と笑った。今まで見たことの無い、歩の笑顔に健人は固まった。へらへらしているわけでもなく、無理をして笑っているわけでもない、クラスメートに見せているような振りまいた笑顔でもない。健人だけに向けた笑みだった。
 電気が復旧したのか、パパッと何度か点滅した後、リビングに灯りが点いた。間近にいる歩の顔をじっと見つめて、どうしてここにいるのかと考えたが、理解できなかった。そして、なぜ、あんなふうに抱きしめたのかも分からない。雷が鳴り始めて、轟音とともに停電したところまでは覚えているが、歩が帰ってきたことなど覚えていなかった。
「……雷、苦手だったんだね」
「え……?」
「あんまり、無理しないほうがいいよ。じゃ、俺、風呂入ってくるから」
 歩は目も合わさずにそう言うとすぐに階段を上がって行ってしまった。か分からず、健人はその場に座り込んだまま、きょとんとしていた。濡れた体に抱きしめられたせいで、服が濡れて冷たいはずなのに、パニックに陥ったときと同じように心拍数が上がっていき、体が熱くなってきた。
 助けてくれた理由が分からない。嫌いだと言って、2ヶ月以上口すら利いていなかったと言うのに。かなり嫌っていたはずなのに、こんなことをされて気持ち悪いとも思わない自分の感情に、健人は戸惑っていた。
 それは歩も、同じだった。
 階段を駆け上がり、自室へ入ると同時に大きく息を吐き出す。雨が降り始めて、雷が鳴り、健人が怖がっているのではないかと思ったら我を忘れたように走り出していた。蹲って震えている健人を見たら、放っておけなかった。嫌っていて、顔も見たくない、口も利きたくないと思っていたのに、どうして抱きしめてしまったのか自分の行動が分からなかった。
「……何、してんだ。俺は……」



温もりやかす

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幸せそうに目を細めて注がれる悦びに酔う奏に、喬允は欲望とは別種の愛情の高まりを覚えた。

「奏、感じるか? 俺の……」
「うん……感じるよ。喬兄の種がいっぱい、俺の中で鑽石能量水 問題騒いでる……」

奏は体内にずしりと響く喬允の重量を味わうように、恍惚と瞳を潤ませ答えた。そして見愡れるほど美しい笑みを浮かべ、

「ありがと、喬兄……」

囁くように感謝の言葉を伝え、柔らかな笑みの形を保ったままそっと目を閉じた

人の体温を感じながら眠りにつくなんて、本当に久しぶりだった。喬允は腕の中の温かな存在を悦びとともに意識しつつ、性交渉による心身の倦怠感もあってか、びろうどのように滑らかで心地よい眠りの闇にあっという間に吸い込まれていった。

それからどのくらい時間が流れただろう。輪郭の曖昧歐洲燈飾な違和感につつかれ、喬允はふと目を覚ました。

違和感の原因は明らかだった。腕の中で安らかな寝息をたてているはずの奏がいない。喬允が抱き締めていたのは、何もない虚ろな空間だった。

「奏……」

ほんの一瞬だったが、何もかも全て夢だったのではないかとの疑念が湧き、喬允は慄然と竦んだ。

しかし、そんな理性の暴走はすぐに収まった。シーツに残された淡いかな窪みが、ついさっきまでここに奏がいたことを伝えている。

喬允はベッドを下り、奏の気配を探して他の部屋を歩き回ったが、見つけたのはテーブルの上に放置された携帯電話だけだった。

「あいつ……どこに行ったんだ……」

足元から、春とは思えぬほどの冷気がじんじんと浸透してくる。喬允は簡単にNeo skin lab 傳銷 身仕度を整えると、当てもないまま夜の中に飛び出した。




背後からす

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店内は、想像以上に広かった。趣味のいいインテリアに落ち着いた間接照明が、寛ぎの空間を演出している。いかにも女性が好みそうな店だが、ざっと見渡す限り女性客の姿はなかった。

青年から初老の男性まで年齢には幅歐亞美創美容中心があるものの、全員が男。顔を寄せ合って親密に会話していたが、奏と喬允が姿を現すと一斉に視線が飛んできた。

喬允は思わず身構えたが、奏は慣れているのか平然とカウンターに向かい、丸椅子に腰を下ろした。そしていかにもマスターといった髭のバーテンに軽く手を挙げ、

「みんなもう集まってる?」
「ああ。あとは奏待ちだ」
「ふ…ん、別に始めてても構わないのに」
「そう言うな。女王様のご到着をみんな今か今かと待ちかねてるぞ」
「何だよ、女王様って」

不愉快そうに眉根を寄せる奏に、バーテンは肩を竦めてみせた。

「女王様じゃなかったら、ファム?ファタルだ。男を狂永久脫毛わす<宿命の女>」
「阿呆くさ」

ここでようやく、奏の隣にいる喬允に気付いたバーテンは、営業用の笑顔を向けて、

「で、こちらの方は? 奏のお連れさん?」
「いや、ただの迷子」

奏の言葉にほんの少し自尊心を傷付けられた喬允は、努めて平然と「奏の友人です」と返した。

すると、その会話に聞き耳を立てていた客二人がっと近寄り、喬允の両脇に立って見定めるような粘ついた視線を送った。そして初対面とは思えぬほどなれなれしい仕草で喬允の肩や腕に触れ、

「へえ、お兄さん奏の連れなんだ。じゃあ例のパーティーにも参加するんだね」
「ぱっと見は地味だけど、よく見たらかっこいいね。それに、身体もが歐亞美創美容中心っしりしててなんか色っぽい―――」

二人の意味深な言動は、奏の荒々しい行動によって断ち切られた。無言のまま立ち上がり、喬允の肩に置かれた手をぎりぎりと掴んで引き剥がし、

「……気安く触んな」



遠慮なくどう

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奏のからかい混じりの問いに、喬允は苦笑しつつ「ありません」と答える。そして「じゃあよろしく頼むな」と告げて、奏の後に続いて部屋を出た。そして近くの駐車場に留めてあるシルバーグレーの車に乗り込むと、自宅のある大体の場所を教えた。奏は驚いた様子で、

「え、そんな近くに住んでたんだ」
「ん? ああ。最近引鑽石能量水騙局っ越したんだよ」

奏の運転する車は十五分ほどで目的地周辺に着いた。喬允は窓から外を指差し、

「ああ、あれだ。あのマンションの五階に住んでる」

対して奏は「へえ」と気のない返事をして、喬允の指が差す方をちらと一瞥だけした。

車で送ると言い張ったのは喬允の住まいを知るためでもあったが、いざその場所を眼前にすると、むらむらと込み上げる鉛色の感情に胸腔が圧迫されてまともな呼吸すらままならなくなる。

自分が決して共有できぬ喬允の空間が、あそこにはある。そしてそこには、何のDiamond水機煩悶も苦労もなく喬允の傍にいることのできる女性がいるのだ。

「奏、この辺りでいいよ。ありがとう」
「あ、ああ。じゃあ停めるよ」

車が路肩に停車すると、喬允は奏の方を向いて微笑み、

「本当に逢えてよかったよ。奏、またな」

親愛のこもった別れの言葉を差し出した。しかし奏は視線を合わせることができず、下を見たまま「うん……」と煮え切らない返事を返した。そして濃厚な躊躇を引きずったままポケットから名刺を取り出し、

「ここに連絡先とか書いてあるから。何かご用命の際はぞ」
「ああ、でも庭もないしな。犬も飼ってないし」
「だから、そういうアットホームな依頼は受けてないって。嫌な上司を失脚さ能量水せるためのスキャンダル作りとかなら協力できるけど」
「残念ながら、そういう予定はないな」
「だろうね」



れを拒絶の仕草

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「やっぱり……逢わないままでいた方が楽だったな……」

思わずこぼした本音半分強がり半分の呟きに、背後から問いが返ってきた。

「俺の……ことか?」

奏は慌てて振り返り、戸口に立つ喬激光永久脫毛允に向かい合う。喬允は見る者の胸に切ない痛みをともす淋しげな笑みを浮かべていた。

普段は整髪剤で営業マンらしい爽やかな髪型にしているのだろうが、今は乱れて顔に掛かり、濃厚な色気を漂わせていた。

ネクタイを外し、ボタンを上半分開けて、皺だらけのシャツを着ているにもかかわらず、喬允の持つ生来の気品や清潔さは少しも損なわれていない。はだけた襟元から覗く胸筋は想像以上に固く締まっており、滑らかな皮膚で覆われていた。

そこにきつく口づけて、所有の痕跡を残したいという欲求を必品牌推廣公司死に抑えていると、その奏の努力を嘲笑うかのように喬允がゆっくり近づいてきた。

奏はたまらず横を向いて、視界から喬允を追い出す。すると喬允はそと受け取ったのか、ぴたりと足を止めて、

「何か……お前を不快にさせるようなこと言ったかな。俺はそういうの疎いから。元々お前は繊細な奴だし」
「別に……不快になんかなってないよ」
「そうか、それならいいけど。これまでも、小さなサインを見逃してしまったせいで、ちょっとしたずれが修復不可能な亀裂にまで広がるという痛い経験を何度もしているからな。よく妻を苛立たせたよ。そんなことやってるから俺は―――」
「奥さんの話は聞きたくないっ……」

奏は切羽詰まった叫びで喬允の言葉を断ち切ると、すがるような目で喬允を見つめた。奏の態度や表情には、拒絶と希求という相反する要素が入り混じっており、喬允は近づくことも離れることもできずただその場に立ち尽くした。

相手が何を求め何を望んでいるのか察する能力に長けているは水解蛋白ずの喬允だったが、肝心な時に使いものにならない。もしかして、医師相手の接待という場でしか発揮できない能力なのかもなと、自虐的な考えすら浮かんだ。



荒かった所為

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自宅に戻り、シャワーを浴びてから桐谷はキッチンに立った。
男の一人暮らしにしては手入れが行き届きすぎているキッチン。
仕事で毎日調理をしているが、自身が摂る食事もほぼ毎食自炊をしている。
仕事でもプライベートでも、料理をすることは好きだった。
個人的にグラタンを作った事はなかったが、以前店で出していたため、レシピの概要は頭に入っている。
具材をどうするかまだ決めかねていた桐谷は、冷蔵庫を開けた。

手早く2人分を調理し、後はオーブンに入れるだけの状態になったところで、オーディオのFMから22時を告げる時報が鳴った。
グラタンの焼き時間は短いから、食べる直前に焼き始めればいい。
すぐに使えるようオーブンの主電源を入れておいたが、23時を過ぎてもアキは戻って来なかった。

”二度と来ない”という可能性も十分あるとは考えていたが。
今朝の戸惑った表情が思い浮かぶ。
恐らくアキは普段、同じ人間の家に再び帰ることはない。
何となく、そういう印象を受けた。
嘆息して冷蔵庫から缶ビールを取り出し、一口呷ると、不意に思い立って、桐谷は玄関に足を運んだ。
我ながら意味の無い行動だとは思ったが、身体が動いた。
想像通り、扉の向こうにはいつもと同じ静かな夜の風景と、冷えた空気があるだけだった。

―何やってんだ、俺は。
自嘲して扉を閉めようとした時、直感が走った。
瞬時に、その直感は確信に変わる。

非常階段。
昨日と同じ場所。
桐谷は迷わず部屋から出て、踊り場の前に立った。

―。。。やっぱり。

階段の隅にうずくまる人の姿があった。
その手には、今朝桐谷が貸してやったコートを大事そうに抱き、膝を抱えて俯いている。




ったものだ

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 大魔女様の回転大ゲンコツの刑から辛くものがれた僕は、今度は炎天下放置プレイの刑に処されている。
 一体何の恨みがあるのか、大魔女様は次から次へと僕に無慈悲な刑罰をお加えなさる。
 ここは街の大広間。執行院から出た僕らはこの雋景場所に待機するよう言い渡され、その代わりと言わんばかりに街へ来た際とは異なる、先ほどよりほんの少しだけ豪華で広い馬車が横に鎮座している。
 院長用の奴だろうか? それはどうでもいい話だが。しかしこの猛暑では、影がある場所は砂漠に湧くオアシスの如く貴重な存在なのだ。

「はいは~い、押さないで押さないで~」

「……」

 このクソ熱い広場に召集されたのにはワケがある。すっかり忘れていたが、大魔女様は街の人気者なのだ。人気者の癖に年に一回しか姿を現さないケチな有名人を一目見ようと、街の住人が仕事等ほっぽり出してこぞって群がっている。
 執行院は混乱を避けるべくこれを見越してこの広い場所に待機させた……というわけだ。

「はい次の人~、お、おじいちゃん久しぶり! 聞いたわよ。また腰や雋景ったんだって?」

「……はい! もう無理しちゃだめよ」

「あ、おばあちゃんも久しぶり~。わっなにこれ。差し入れ? ありがと~!」

「……」

 僕には無縁の現象を最大レベルで実現する大魔女様の姿に、やや軽い嫉妬を覚える。むかつくのでやはり馬車の中で待機してようと思う。お前らはそうやって慣れあっているがいい。
 僕にはお前らが一生かけても手に入れられない、現代日本が誇る文明機器、スマ――――

「大魔女様、お待たせしました。帝都より伝心が届きましたのでご報告いたします」

「あれ、従者の方は……」

「あ、はいはい今行くわ。おーい、アホの異世界人、出ておいで~」

――――なんと間の悪い。異世界人はお前だよ。くそぅ……
 しかしこの場所に置いては僕がそれに当たるか……戦いは数雋景だとよく言。世界は違えど所詮、人は多数派に流れるのが持って生まれた性なのだ。

「何アタシを差し置いて一人で休憩してんのよ」

「熱中症はいやなんすよ」

「なにそれ。アンタ、日光で病気になんの?」

「軟弱にも程があるわね。太陽は大地を育む恵みの光なのに……」