背後からす

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店内は、想像以上に広かった。趣味のいいインテリアに落ち着いた間接照明が、寛ぎの空間を演出している。いかにも女性が好みそうな店だが、ざっと見渡す限り女性客の姿はなかった。

青年から初老の男性まで年齢には幅歐亞美創美容中心があるものの、全員が男。顔を寄せ合って親密に会話していたが、奏と喬允が姿を現すと一斉に視線が飛んできた。

喬允は思わず身構えたが、奏は慣れているのか平然とカウンターに向かい、丸椅子に腰を下ろした。そしていかにもマスターといった髭のバーテンに軽く手を挙げ、

「みんなもう集まってる?」
「ああ。あとは奏待ちだ」
「ふ…ん、別に始めてても構わないのに」
「そう言うな。女王様のご到着をみんな今か今かと待ちかねてるぞ」
「何だよ、女王様って」

不愉快そうに眉根を寄せる奏に、バーテンは肩を竦めてみせた。

「女王様じゃなかったら、ファム?ファタルだ。男を狂永久脫毛わす<宿命の女>」
「阿呆くさ」

ここでようやく、奏の隣にいる喬允に気付いたバーテンは、営業用の笑顔を向けて、

「で、こちらの方は? 奏のお連れさん?」
「いや、ただの迷子」

奏の言葉にほんの少し自尊心を傷付けられた喬允は、努めて平然と「奏の友人です」と返した。

すると、その会話に聞き耳を立てていた客二人がっと近寄り、喬允の両脇に立って見定めるような粘ついた視線を送った。そして初対面とは思えぬほどなれなれしい仕草で喬允の肩や腕に触れ、

「へえ、お兄さん奏の連れなんだ。じゃあ例のパーティーにも参加するんだね」
「ぱっと見は地味だけど、よく見たらかっこいいね。それに、身体もが歐亞美創美容中心っしりしててなんか色っぽい―――」

二人の意味深な言動は、奏の荒々しい行動によって断ち切られた。無言のまま立ち上がり、喬允の肩に置かれた手をぎりぎりと掴んで引き剥がし、

「……気安く触んな」